病院給食に興味があっても一体どんな仕事をしているんだろう?と疑問に思ったことはないでしょうか。
じつは、資格を取った調理師の1割が病院給食(調理師の就職先)に就いているんです。
この記事を読むことで、幅広い現場で活躍できる調理師が病院給食でどのように活躍できるかがわかります。
長年調理師として活躍し食品メーカーへ転職した筆者が、病院給食に従事する栄養士さんや調理師さんに聞き込みした結果をまとめています。
最新情報を発信していますのでぜひ参考にして下さい。
病院の調理師がつらい理由
街のレストランで働く調理師との違いはたくさんあります。
病院給食ならではの、特に違うところを解説していきます。
体調管理に気を付けないといけない
院内へ出入りする為、感染症対策といった管理意識は徹底されています。
コロナ過でもあったように出勤時の体温、体調管理チェックは今も必須です。小さなお子さんをお持ちの場合、保育園・幼稚園でもらうRSウイルスのウイルス性には十分注意が必要です。とは言っても、家族で住んでいる以上うつらないようにすることは難しいと思います。
なので、あなたや家族が体調管理を徹底したとしても外的要因もあると思います。管理に厳しい病院側の要望にストレスを感じてくる場面も多々あるようです。
コロナ過、仕事の関係で料理が美味しいと評判の産婦人科に伺った際にベテラン調理師さんと話す機会がありました。急遽ビジネスホテルに泊まったエピソードです。
調理師さん
コロナ過はほんとに大変でした
こどもの熱が出て検査で病院へ。結局インフルエンザだったけど結果がわかるまで2日間ホテルに泊まった。新型コロナウイルス最盛期だったこともあるが、病院で働く意識の高さをあたらめて感じた。
経験のない新型コロナでしかも、初期の段階だったので過度な対応だったと今は感じるかもしれません。病院としては感染症の院内感染は絶対に防がなければいけません。
今も病院ごとにルールを設け対策管理しているところはたくさんあります。
本人だけでなく家族の体調管理も重要な職場
調理責任が重い
調理レシピは管理栄養士からの指示で調理を進めていきます。
患者さんそれぞれの症状に合わせた調理と調味、食物アレルギーの配慮、栄養成分重視の調味、治療食を作っていきます。
調理指導通りに進めないと患者さんの体調が悪くなる可能性が十分考えられます。病院の規模が大きくなればパートさんも多く、指導する立場になります。調理師ひとりで調理するにはいいかもしれませんが指導責任も加わってきますので責任ある仕事です。
命に係わる調理と指導
個別調理 覚えることが多い
患者さんがそれぞれ違うと違うと説明しましたが、大学病院や総合病院となると個別調理が増えてきます。重要な個別調理の場合、栄養士さんが直接作る病院もあります。
個別調理は一言でいえばめんどくさいと言えるでしょう。
だからこそ知識や技術のある調理師が必要となります。個別調理の患者さんたちは入院・退院、そして新たな患者さんの入院…と入れ替わりで続くので日々覚えることが続きます。
ただ、栄養学的な配慮は栄養士が担当しているので、具材の大きさ・柔らかさを特に注意していけば問題ありません。
調理師さん
栄養士さんとの
コミニュケーションも
大事ですよ
具材の大きさ・柔らかさに注意
栄養士との関係がつらい
管理栄養士または栄養士さんとの関係がぎくしゃくする場合もあります。
管理栄養士さんも国家資格ですが調理師と比較しても勉強量が違います。難しい試験を合格して責任ある仕事をしています。そういった意味で、筆者の場合は尊敬する思いと同時に『食』に対する考えの違いを感じています。
もしあなたが街のレストラン調理勤務からの転職であれば、『美味しさ重視』と『栄養重視』の違いにギャップを感じるでしょう。
例えば、塩分を抑えても完食できる調理をしてほしいなど。いくら栄養バランスの良い食事を提供しても完食しなければ意味がないからです。
病院給食の基本は、患者さんの栄養バランスがすべてです。その次にあるのが、美味しさと捉えましょう。
病院では栄養士の指導に従う事
病院給食の労働環境
病院調理師の年収
仲のいい調理師さんでも年収を聞きこむことは出来なかったので、一般求人から調査した金額は、、、
年収で320~400万です。(従事する病院または委託会社により差があります)
月収にすると24万~29万ほどとなります。
病院調理師の待遇
病院給食に従事する場合、属するところが2つあります。
直営
『直営』か『委託会社』かになります。
直営は文字通りに病院が直接経営している食事提供です。今は直営している病院はかなり少なくなってきた印象があります。直営の良いところは、栄養士や調理師さんはじめ施設全体が料理に関心があって『食』を楽しみにしている事です。とある直営病院給食では、退院時に豪華なおかずをサプライズで準備されています。
また、栄養バランスが取れた美味しい食事をコンセプトに新メニュー試食会をされているところもあります。
病院経営なので福利厚生はもちろん給与面でも待遇評価の高い場合が多いと感じます。
委託業者
委託会社で有名なのが、日清医療食品さんやシダックスさんです。
委託の場合は雇い主は委託会社となり病院側ではありません。ですので待遇は企業によって変わってきますので確認が必要です。主に栄養士さんのニーズが高く、栄養士さんも積極的に現場で調理をしている姿をよく見かけます。
私の同僚の奥さんは栄養士で、院内給食の委託会社で働いているのですが自らを『盛付け士』を称しています(笑)
組織が大きいので待遇もよく、福利厚生も手厚いですし育休も積極的に進めてくれる企業が多いです。
病院給食の仕事内容
今回仕事内容を聞き込んだ先は、常時10~16名入院数がある開業医さんの『産婦人科』調理師Iさんに伺ってきました。
正社員としてメインで働く調理師Iさんと、2人のパートさんで調理をされています。
【食材の仕入れと仕込み】
食材の洗浄、皮むき、カットなどの
下準備食材の計量および仕分け
煮る・焼く・蒸す・揚げるの基本調理
【食器の準備と片付け】
食器やカトラリーの準備、
配膳食器の洗浄、消毒、保管
【配膳・下膳】
患者への食事の配膳および
下膳食事の配膳車の管理
【清掃業務】
調理場および配膳エリアの清掃、
消毒ゴミの分別および廃棄
【食材の在庫確認】
食材や調理用品の在庫確認食材の
発注および受け取り
【栄養管理補助】
個別:患者さんごとの献立作成
来月の献立作成
6年開業医の産婦人科で働かれている50歳男性、調理師Iさんに1日のスケジュールを聞きました。出勤は9時半、帰宅は遅くても19時とのこと。患者さん人数もそこまで多くないので時間に追われることは少ないそうです。手作りが基本で、例えばマヨネーズも手作りで仕込んでいるとのこと。
6年勤務 Iさん
なるべく調味料も手作りで
心がけてます
Iさんの勤務体系からわかるように、病院給食のメリットは残業がほとんどないことです。通常のレストランと違って生活スタイルが確立されていて長時間労働という指摘はほとんど聞きません。
- 9:30出社
健康管理チェック、作業着着替え、当日分配膳数の確認
当日分の調理や盛付
明日分の仕込み、食材切り出し
- 12:00昼食提供
温かいもの、冷たいものを意識して提供
例:天ぷらうどんの海老天は提供直前に揚げる
院長先生、職員へも提供4~6人分
- 13:00昼食片付け
食器洗浄機、調理器具洗浄
- 14:00食材仕入れ
患者人数が多くない為、基本的にはIさんが仕入れ
- 16:00休憩
休憩室または車で休憩1時間
- 18:00夕食提供
調理と提供 片付けなどはパートさんにお任せ
- 18 :30退社
- 19:00帰宅
通常の病院給食の調理師・調理員も、8時間の労働時間がほとんどです。その代わり、段取りや手の速さはある程度必要になってきます。
患者数が多い病院は栄養管理長さんの指示のもと組織的にシフトは考えています。
逆に言えば残業しがちなのは栄養士さんたちかもしれません。
病院調理がイメージできる動画
沖縄県にある南部徳洲会病院さんがわかりやすい病院給食の動画を24年の1月にアップされていますのでこちらも参考にして下さい。
最新の病院給食事情
病院食といえば味が薄い、美味しくないとよく聞きますが最新の取り組みとして、患者さんの為の美味しい病院食コンテストを実施されているようです。
病院も経営ですし食事に対する患者さんの意見もしっかりと聞き込み姿勢になってきたのかもしれません、委託企業側も特色を出していくうえで『美味しさ』は差別化する大きな要素となっています。
患者さんが喜ぶ病院食の取り組みは、以前よりありました。
今では大学病院や総合病院も栄養バランスに配慮した上での美味しい食事に、ちからをいれています。
調理師におすすめの病院給食
調理師の知識と技術を発揮できる病院給食はずばり上の4つです。
つまり患者さんの食事制限が少なく普通に食べるコトができる人が入院している病院です。
特に、開業医産婦人科では既に美味しい食事を謳っているところも多くあり人気です。私の妻も食事が美味しいと評判の産婦人科を利用しましたが出産後1週間とにかく美味しいご飯が食べれたと満足していました。体調により食べれれない時もあったらしいのですが、かなり残念だったみたいです。
退院前日の夕食はステーキが出たみたいです。ソースも市販っぽい感じではなくフランス料理に出てくるような本格的なソースで驚いていました。
筆者の調理師仲間が、食事がとにかく美味しいと言わてれいる産婦人科福田病院さんへ就職しました。そこは和洋仏の料理を提供していてまるでレストランのようなメニュー構成なんです。
彼から聞いた話では患者さんのアレルギーや体調を踏まえて提供するのが大前提。でも、普通の病院食とは全く違って本格的なレストランの調理をしているとのことでした。
周りの調理に携わるひとも、プロの料理人ばかりであまり病院にいる感覚がないと話してくれました。
ティータイムやデザートの時間を設けスイーツも提供されています。筆者の調理師仲間の彼は、料理しか出来なかったのですがここで、デザートを覚えたほどです。
このように、料理にこだわり患者さんに喜んでほしいと考えている病院は調理師が絶対に必要ですし、おすすめです。
病院で働く調理師・調理員のメリットとデメリット
病院給食で働くメリット
- 安定した勤務体系
- 病院や委託会社によって福利厚生が充実
- 好きな仕事が活かせる
- 調理師資格条件の実務経験(2年)が取れる
- 病院によってはレストラン並みの調理が出来る
- 栄養学も学べる
飲食レストランと違って、ここの○○料理が美味しい・人気○○店・儲かるなどの視点はないですが安定した勤務体系というのが大きな魅力です。
料理が好きで、安心して食べてもらいたいという意識が高い人は合っています。栄養学に重点を置く職場ですので、食材の知識や効率よく栄養素を摂取できる調理など知識は増えていきます。
産婦人科で提供されている病院食のように、『美味しい』にフォーカスした病院もありますので自分にあった選択が出来ます。
病院給食で働くデメリット
- 体調管理に気を付けないといけない
- 調理責任が重い
- 個別調理 覚えることが多い
- 栄養士との関係がつらい
- 立ち仕事
飲食店営業から転職する場合、一番戸惑うのが『栄養士との関係』です。今までと違い、お客さんは『患者さん』ですのではき違えないようにしましょう。安心安全な調理に徹して下さい。
これらは、あなたにとってデメリットと感じなければ問題はありません。
ネット上にはないリアルな情報を得るためにより深堀した取材をしています。
今回は『○○会病院に勤務している男性』に伺ってきました。
なるべく取材した相手の言葉で記すようにしています。
15年、調理補助してます
勤務体系を教えてください
委託業者として勤務。今は6時~15時まで。
早い時間とと遅い時間の2交代。朝食の準備と片付け、昼食の準備と片付けがメインです。
調理補助で大変なことを教えてください。
患者さんに合わせて準備をしないといけないこと。それだけ。
昔は全部手作業で準備していたけど、今センターで加工した真空パックが届くからかなり楽になった。
特別な治療食とかは気を使うし、数がないからこぼしたりしたら大変です。
あと、体調が悪くなった時は大変。わたしが休みだった場合、急に出勤しないといけなくなるし、シフトを考えないといけないし…その場合を想定して準備しないといけない。
調理補助の仕事のいいところはなんですか?
だいたい8時間労働で終わること。
普通にやっていればむずかしいことはないよ。うちは、自由に有給も使えるから子供のイベントも普通に行ってる。
病院給食の調理員として検討している方にアドバイスを。
給料はそんなに期待しない方がいいかも。でも、労働環境はわりといい。
食材を切ったり、大量に炒めたりと重労働と思っているひとも多いと思うけど、うちはセンターで真空袋に入った食材を温めて盛り付けているのがほとんど。段取りと盛付の手早さだけ考えれば大丈夫だと思うよ。
病院給食で働いているひとはほとんど女性だから気楽に働けている。栄養士もパートさんも女性が多い。うちの病院はみんな優しいひとが多い。
病院の調理師ってきつい・大変なの?まとめ
病院給食のつらい・大変なところは主にこのような理由と言えます。
調理師の中でも料理を感覚で作るひとと、レシピに沿って完璧に作り込むひとがいます。
感覚のひとはおそらく病院給食には向かないと思っています。逆に論理立ててきちっと計量をするタイプは向いています。それは、病院給食においては確実な仕事で安心安全な調理をしてほしいから。
向いていると思った方は調理特化エージェントに登録して、病院給食の調理師求人
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