2024年5月からOpenAI社から新しくChatGPT4oがリリースされました。
これからもアップデートを重ねさらに進化していくでしょう。
調理に携わる私たちにとって、どのような使い方が出来るのでしょうか?
プロの調理師・料理人さんが上手く活用できれば、
労働時間の短縮とスキルアップにつながり
あなたの価値を高めてくれます
長年調理師として活躍し、大手食品メーカーへ転職した筆者が、最新の使い方をご紹介します。
ChatGPT概要
ひと口にAIと言ってもたくさんのツールがあります。
その中で総合的に評価が高いのが『ChatGPT』
まずはどんなツールなのか簡単に説明します。
既にご存じの方はスルーして下さいね。
右側の+マークをタップすると出てきます。
- ☆彡ChatGPT4o 現在のモデルまでの流れを説明
- ChatGPTの歴史
- 2015年GPT-1 リリース
2015年に設立したOpenAI社が初のリリース
- ~2019年GPT-2 リリース
従来モデルと比較して言語コーパスは10倍、高い精度の文章生成が可能に
- 2020年GPT-3 リリース
45TBの膨大なテキストデータから情報を収集、GPT-3は違和感のない文章を生成できるようになるも、完璧な文章は未熟で人間による添削などの作業が必要
- 2022年11月GPT‐3.5 及び ChatGPT リリース
世界最大規模の言語モデルで、多種多様な言語タスクにおいて優れたパフォーマンスを発揮 2か月後には1億人のユーザー登録
- 2023年3月ChatGPT4
GPT-3やGPT-3.5の上位モデルとしてリリースされたGPT-4は、従来モデルと比べて高い精度の出力が特徴
- 2024年5月ChatGPT4o 一部有料でリリース
最新モデルのGPT-4o(Omni、オムニ)
一定制限はありますが無料で使えるのが最大の特徴
文章能力が格段にUP、感情が込められた音声会話、画像認識UP
- ①ChatGPT Plus:月額20ドル
- ②ChatGPT Team:月額25ドル/人
- ③ChatGPT Enterprise:要問合せ
- ④ChatGPT API:トークン数に応じた従量課金制
ChatGPTを使う前に理解しておくこと
他のツールを含め、ChatGPTはまだまだ万能ではありません。
指示を出せばなんでも回答してくれるほど完璧ではないというのが今の評価です。
そこで、使いこなすコツは
『プロンプト(命令文)』の精度を上げる事。
プロンプトとは…AIにより具体的指示を出す命令文のこと
例;あなたはプロの料理人です。和食の専門家が作る食材費1,000円未満の筑前煮5人前レシピを教えてください。
- プロの料理人・和食の専門家…AIに対してどんな人物像なのかを具現化
- 食材費1,000円未満…数字を提示することによりわかりやすくなる
- 筑前煮5人前レシピ…指定料理であれば固有名詞、○○人前を提示するとわかりやすくなる
上記のように、具体的なプロンプトを示してあげないとAIも回答を絞ることが出来ず抽象的な回答となってしまいます。
ここで操作する私たちが大事になってくることは、『文法能力』
AIが読み取りやすく回答しやすい言葉を使ってプロンプトしていきましょう。
まずはこちらのプロンプトからの回答がどんなものか見てみましょう。
- 例あなたはプロの料理人です。和食の専門家が作る食材費1,000円未満の筑前煮5人前レシピを教えてください。
- A
結構いい線いってるかも!ですね。
完成度は高いんじゃないでしょうか。
それではより本格的な活用方法をご紹介します。
商品開発・メニュー考案
料理人の肝となるのが『商品開発・メニュー考案』ですね。
そう新メニューの開発です。
ChatGPTの得意な事のひとつである”アイデア出し”を利用していきます。
反対に、AIの苦手分野である”実体験の情報”でレシピスキルを補うという感じです。
実際にやってみましょう。
季節食材・イベント時のアイデアをもらう
あなたはプロのイタリア料理人です。秋の食材を使った独創的な新メニューパスタを考えてほしいのですが、まずはパスタで使える秋食材を箇条書きにして、次にパスタのアイデア出しを箇条書きにして提示して下さい
最初の指示通りまずは食材のアイデア出しをしてくれました。
なかなか良いセンスしてますね。
続いて、秋パスタメニューのアイデア出しです。
いかがでしょうか。
イマイチだな・・・意外とやるな!それぞれあるかとは思います。
もしアイデア出しがイマイチだなと感じた場合は、追加で
追加でアイデア出ししてもらえますか
と、プロンプト入力してみて下さい。
1秒も立たず、追加で提示してくれます。
AIのすごいところは嫌な顔ひとつせず、どんどんやり直しをしてくれるところ。
そして、イベントのアイデア出しでは、
あなたはプロのイタリア料理人です。12月24・25日のクリスマス特別メニュー、前菜・スープ・パスタ・肉のメイン・デザート5皿コースで独創的なコースメニューを5つ箇条書きにして提示して下さい
このようにプロンプトを入力すると、ズラッと箇条書きにして書き出してくれます。
この回答は省いていますが是非やってみて下さい。
毎年変えるクリスマスメニューって地味に悩みます(´;ω;`)ウゥゥ
そのままメニュー考案として使えないかもしれませんが、
アイデア出しとしてはとても優秀なツールです。
アイデア出しをしてもらったら、自分の料理スキルを加えアレンジします。
メニュー考案で悩んでいた時間が一気に無くなりました。
特定のサイトからアイデアをもらう
次は少し高度なテクニックを使います。
ChatGPT4oの有料版20$(3,000円程)を登録してブラウジング機能を最大限使っていきます。
ブラウジング機能とは…インターネットを使って、リアルタイムの情報や最新のニュース、特定のトピックに関する詳しい情報を検索して提供する機能
例:「中国料理 日本人に合う料理」の2つのキーワードで検索し、上位10サイトをブラウジングしてランキングトップ10として箇条書きに提示してほしい
- 2つのキーワードで検索…目安となるサイトをAIが識別しやすいプロンプトにする
- 上位10サイトをブラウジング…より具体的なサイト数を提示してブラウジング先を指定する
- ランキングトップ10…自分が見やすい方法で提示する
すると、このような回答が10秒ほどで出てきます。
- 例「中国料理 日本人に合う料理」の2つのキーワードで検索し、上位10サイトをブラウジングしてランキングトップ10として箇条書きに提示してほしい
- A
1位ラーメン、2位餃子、3位チャーハン…と青字で書かれたサイトをブラウジングしてランク付けをしてくれています。
自分で1サイトづつ見て集計していったらとんでもない時間になってしまいますが、
この方法だと10秒で集計し要約してくれます。
それでは、より料理人目線でプロンプトを出してみましょう。
「プロの中国料理 特集」この2つのキーワードで検索して出てくる上位10のサイトをブラウジングして、そのメニューをアレンジし秋の独走的な新メニューを10品提示して下さい。メニュー名と使用食材は箇条書きで記してください。
”独創的な”というプロンプトが重要ですね。
プロが満足するメニューを期待したいところです。
なかなか本格的なメニューを出してくれました。
このように特定サイトを指定してアイデア出しをしてくれるので、
新メニューの考案に強い味方となってくれます。
原価計算
レシピで作り方も大事ですが、プロの調理師としては原価計算も重要です。
そこで意外に時間がかかってしまうのが「歩留まり」。
調理においての歩留まりとは、
魚をさばいて実際の可食部分が50~60%つまりは歩留率が50~60%。
パスタの場合は1㎏の乾麺を茹でて水で膨らみ2.2㎏になる、つまり歩留率が220%。など
歩留率(%) = 実際の成果数 ÷ 全体の総数 × 100
歩留まりについて詳しくはこちらを参考にして下さいね。
参考例として
写真のようにシンプルなトマトパスタを試作で作ってメモを取ったとします。
右上におおよその歩留率もメモしてます(※参考例なので目安です)
くしゃくしゃな裏紙で書いてしまってすみません(´;ω;`)ウゥゥ
書いたメモを写メして貼り付けて、下記のようなプロンプトを記入します。
この画像を読み取り、歩留まりを考慮して1人前の原価計算をして下さい
するとこのように回答してくれます。
1人前108.4円
5秒も経たないうちに、答えを出してくれました。
1人前の原価だけの提示したのですが、不安だったので「歩留まりを考慮した各食材の原価も提示して下さい」と追加プロンプトしてます。
すると、ちゃんと歩留まりを踏まえて原価計算をしてくれていました。
この方法を使えばより時短でレシピ作成をすることが出来ます。
数字の計算はヒューマンエラーもあるので、AIにしてもらうのが効率的かつ合理的です。
FL比率
FL比率とは、飲食店の売上高に対する食材費と人件費の割合を表す指標です。
メニュー開発を通してFL比率を考えることはお店の売上や利益の大きく起因することとなります。
(FOOD:食材費+LABOR:人件費)÷売上高×100(%)
フードのFと労働のLの頭文字を取って、FL比率と呼びます。
一般的に飲食業界では60%以下の指数を目標としています。
通常は1か月単位のお店の売上で試算するのですが、1メニューとしても参考になります。
例えばですが、3つのパスタメニューがあるとして、
どのメニューがFL比率の観点から優秀なのかを見ます。
事前に計算して準備するのはこれだけ
- トマトパスタ 売価800円 原価108円 調理時間40分
- ペスカトーレパスタ 売価1,600円 原価900円 調理時間20分
- カルボナーラ 売価1400円 原価400円 調理時間15分
- ※人件費1時間1,200円。
トマトパスタは、トマトソースの仕込み時間(10人前)を含めた調理時間としています。
プロンプトはこちら
・トマトパスタ売価800円原価108円調理時間40分・ペスカトーレパスタ売価1,600円原価900円調理時間20分・カルボナーラ売価1400円原価400円調理時間15分 の3種類のうちFL比率の観点からどのメニューを沢山売ればもうかるのか教えてください。人件費1時間1,200円。
入力するとすぐに回答が始まります。
結論、FL比率の観点で優秀なのは
50%のカルボナーラとなりました。
簡単な考察もしてくれるので助かります。
実際の現場では、事前に切り出しや仕込みをしています。
この考え方に関してはご自身の判断となりますね。
人時売上高
人時売上高(にんじうりあげだか)は従業員一人が1時間に生み出す売上の指標です。
数年前は1時間4,000円を目標としていましたが、時給が1,000円を超えた今、5,000円~6,000円を目標指数にしている飲食店が増えています。
似ている指標で人時生産性がありますが今回は省略します。
人時売上高 = 売上高 ÷ 総労働時間
FL比率と同様、3つのパスタメニューがあるとして、
人時売上高の観点からどのような考察が出来るか聞いてみましょう。
・トマトパスタ売価800円原価108円調理時間40分・ペスカトーレパスタ売価1,600円原価900円調理時間20分・カルボナーラ売価1400円原価400円調理時間15分 の3種類のうち人時売上高の観点からどんな考察が出来るか教えてください。人件費1時間1,200円。
こちらもすぐに回答してくれました。
結果、¥2,800/時間のカルボナーラが
人時売上高の観点からも優秀だと判断されました。
人時売上高は数値が大きい程良いので、この考えでもカルボナーラが高評価。
このように『FL比率』と『人時売上高』の指標を踏まえながらメニューを考えます。
簡単に出来たとしても『FL比率』と『人時売上高』の毎回見る必要はないと思います。
大切なことは
ただ作るのではなく考えて作っている。
なおかつ、
AIを活用している。というのが自身の価値を上げてくれる部分です。
大量調理レシピ
病院・老人ホーム・幼稚園や保育園での給食調理において大量調理のレシピ考案にも役立ちます。
指示したプロンプトはこちら。
冬野菜マカロニグラタン1食100gの30人分レシピを原価を記載して作ってほしい 使用するホワイトソースは既製品のルーです 使う冬野菜は玉葱、里芋、ブロッコリー、ホウレンソウです。同時に使用食材のアレルギー表示も提示して下さい。
すると、
いつも通り無難に回答しれくれたのですが…少し不安な点が…
こちらは私が持っているグラタンレシピです、比較してみましょう。
赤字がAIには足りていない食材です。
小麦粉とバターは既製品がのりやすいように加えたものなので無くていいのですが、
コンソメと水は必ず必要なので完璧とは言えない回答です。
結論、だいたいの分量やレシピは役に立つけど抜けがある。
というところですね。
ここで大事なのは、あくまでも参考にするという考えなので回答の中身を良く確認して人間が修正してくのが一番良い方法です。
応用編として、既に持っている30人前のレシピを入力または、写メに撮って貼り付けて
このレシピを参考に46人前のレシピを提示して下さい
と入力すると、
手持ちレシピから踏まえて提供人数の食材量を追加提示してくれます。
ただ注意してほしいのは体調調理の場合は、単純に掛け算ではないので調味料は特に注意して下さい。
海外料理本を翻訳
ChatGPTの素晴らしいところは多言語翻訳ができること。
現地本をサクッと日本語に翻訳することが出来れば現地オリジナル料理をそのまま知識として得られ調理することが可能となります。
ではさっそくやってみましょう。
現地で私が購入した”肉料理の本”を参考例にします。
適当なページを写メしました。
この写メを貼り付けて、プロンプトを書きます。
添付しているイタリア料理レシピをイタリア語から日本語に翻訳して下さい
するとこのような回答が出てきます。
本の構成上、材料と作り方がズレて翻訳されていますが、
ほぼ問題なく翻訳されています。
このように様々な文章の翻訳が数秒で出来ます。
日本の料理本はアレンジされたものが多く出回っているので、本場の料理レシピを知りたい場合はこのように海外の本を購入し翻訳する知識として習得出来ますね。
ホールサービスへ料理を説明する
料理の価値を伝えるためには、ホールサービスの魅力的な説明が不可欠です。
特に個人経営では、メニュー考案から接客、会計まですべてオーナーがこなすというのも珍しくありません。
口下手だとホールスタッフに説明するのも大変です。
自ら作った新メニューをお客さんにどのように伝えれば価値が生まれるのかアドバイスをもらいましょう。
プロンプトはこんな感じで
秋の新メニュー さんまと紅あずまのパスタを提供する際どのように説明すれば価値が高まるか教えてください。さんま:新鮮なさんまをコンフィー調理した、紅あずま:長期熟成した紅あずま使用 『おすすめの説明例』と『そのポイント』を教えてください。
すると、このように回答してくれます。
少々長くてくどいので、追加プロンプトで
「もっと短く説明してほしい」と書き込むとシンプルにしてくれます。
口下手なシェフでもこのように説明例を出してもらったらしゃべりやすいですよね。
しかも音声で説明すると、よりホールスタッフに伝わると思います。
外国人客の接客
調理師・料理人としては直接的な活用ではないですが
オーナーシェフに活用してもらいたい方法です。
今はインバウンドが高まり、外国人集客が売上に直結する時です。
各企業は英語ができる人材確保、POPでの多言語記載、英語でのインスタ発信などさまざまな方法で取り組んでいます。
個人店は設備や資本力がないからと言って諦める必要はありません。
ChatGPTをフル活用して多言語音声で接客ツールとして活用しましょう。
特に優秀なところは、人と会話するように反応速度がとても速い点。
人と会話するかのように1秒も経たないうちに返答してくれます。
英会話の出来るアルバイトを探さなくてもいいですし、スマホなのでシフト管理も必要ありません。
無料で使えるのですが、お店で活用する場合はかなり会話を繰り返すと予想されるので有料版で登録するのをおすすめします。
ラーメン・そば・たこ焼き・お好み焼き・鮨やさんなどすべての飲食店で活用できます。
調べもので利用
調理器具を新たに購入検討するときにも情報収集として役立ちます。
たとえば、真空包装機の購入を考えていてどのメーカーを選んでいいのかよくわからない時。
プロの料理人が使う真空包装機シェア№1のメーカーはどこですか。
すると回答は、
ネット上を検索して、シェアトップの『TOSEI』さんを提案してくれました。
追加で”シェア割合を提示”の指示を出したのですが情報公開していないとの回答。
追加でこのようなプロンプトを出しました。
真空包装機のメリットとデメリットを教えてください。また小型たのタイプで価格帯も教えてください
すると、メリットとデメリットを公式サイトから要約して表示してくれます。
小型の価格帯は簡単な説明だけでした。
このように
簡単なスペックは回答してくれましたが、
価格について”詳しくは販売代理店や直接の問い合わせをお願いします”との回答。
こんな感じで
ネット上の膨大な情報を探す前に、ChatGPTに聞けばかなり絞って提案してくれるので楽ですね。
後は、『TOSEI』さんの公式サイト株式会社 TOSEI(トーセイ)真空包装機 で商品を探すだけという流れ。
詳しく知らない調理器具などは、まずチャットGPTに聞いてみると効率的です。
プロ調理師・料理人向けChatGPTを利用して業務効率を上げる方法 まとめ
飲食業界はどうしても労働時間の比重がおおきくなる業界です。
すこしでもAIを駆使して長い労働時間を無くし、
効率的かつ合理的な働き方を考えましょう。
ご紹介した活用方法を現場で使わなくても、
AI活用を話すことが出来れば最先端の知見を持っている人材として一目置かれるはずです。
これだけは伝えたい!!
最後に、
私は、お客さんを喜ばす飲食業界が好きだけど、長時間労働や安い給料で辞めるという仲間をたくさん見てきました。
調理師という職業はもっと価値の高い存在です。
調理のスキルだけでなくAIスキルを身に付け更に、あなたの価値を高めていきましょう。
しょく選び.comはそんな調理師さん・料理人さんを全力で応援しています。
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